また会えたときに

これは、我がオットの遺した手記による、実話に基づいた物語です。

【第一話】プロローグ(scene02)出会いは必然?

⇦ <前回のお話し>

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Scene03へ続く

 

 


<Podcastはこちらから>

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Scene02

(SEタクシーのドアが閉まる音)

私「ありがとうございましたー!」

 

(SEタクシーの走り去る音)

 

ナレーション(私)「飯田駅からタクシーで20分ほど走り到着した宿は、赤い屋根に白い壁、木枠窓といった、スイスの山小屋風の可愛らしいペンションだった。」

 

私「写真で見るより大きいし、可愛い!でね、ここは本格的な温泉が人気らしいわよ。さ、早く入ろう!」

 

のぶ「う、おおうう。」(慌ててついていく)

 

 (SEペンションの玄関ドアを開ける音。カランカランッとドアベルが鳴る)

 

私「こんにちはーー」

 

ナレーション(私)「玄関を入るとすぐ右手に、小さな受付カウンターがある。左手は白い壁になっていて、壁の向こうからは人の楽しげな話し声が聞こえてくる。すでにチェックインを済ませたグループがいるようだ。」

 

(四人くらいの人の会話や笑い声が小さく聞こえる)

 

ナレーション(私)「チェックインを済ませると、客室は二階だと案内された。受付カウンターの横には通路があり、通路を挟んで客室に向かう階段がある。通路奥が食事会場。カウンターの向い、反対側になる壁向こうは、談話室になっているらしい。階段を上らずに、白い壁つたいに奥へ進むと、アーチ状に壁がくり抜かれた広い入り口があった。」

 

(談話室の声が大きくなっていく)

 

ナレーション(私)「どんな人たちがいるんだろう。私は、ペンション内を見学して歩いている風を装って、少し大袈裟にキョロキョロしながら談話室に入っていった。15畳ほどの洋間の談話室の中にいたのは、男性三人と女性一人。女性が私に気付いてこちらを眺めたので、にっこり笑って会釈する。」

 

私「こんにちは~~」

 

女性(小さな声で少しとまどいながら)

 

「あ、、こんにちは。」

 

ナレーション(私)「他の男性たちも、ちらっとこちらをみて、小さく会釈する。そのそれぞれのタイミングや、四人が座っている位置などから、男性二人組と、若い男女のカップルという組み合わせだと、瞬時にわかる。」

 

私(軽快に)

「うふ(笑)お邪魔しました! 」

 

ナレーション(私)「私はくるりと向きをかえ、つられてついて来ていた夫に、目で「部屋にいくわよ」の合図をして、客室へ向かう。」

 

(二人が階段を上る足音)

 

私(声を殺して)

「うん。まずはこれだけの情報を得られれば充分か。。。」

 

のぶ(あきれた声で)

「おいおい。。きみは探偵か刑事か。。。」

 

私(引き続き真剣な声で)

「のぶさん、見たじゃろ? あの人、ただ者じゃあない。。。」

 

(ドアの鍵を開けて、部屋に入り、ドアを閉める音)

 

私(少し声を大きくして)

「ねえ!どうみても普通の人じゃないじゃろうが。あのしろーい男ん人。いや、ちょっと待って。まずは、あのベンチソファーに座っていた男女はカップルか夫婦ね。30代半ばってとこかしら。そんで、テーブル席にいたしろーい人ともう一人の男性二人組は多分お仲間ね。うん。そう。男女カップルと、男性二人組はたまたま談話室で一緒になって会話していたんじゃろね。」

 

のぶ(無視するように)

「さて、夕食前に、まずはお風呂いってくるかな。」

 

私「で!!!ね!!!あの人!もう何者ーー!? あんな上下真っ白な白装束をな、嫌味なくさらっと着こなして。会釈して笑ったときに見えた歯まで白かった!あんな サラッサラなストレートヘア、女性にだってめったにいないわよっ。まさか、、芸能人じゃろか? まつげもバチバチで中性的な顔立ちやったわー。あきらかに普通やないオーラ持ってたもんね? ね?」

 

のぶ「はいはい。またきみの悪い癖が始まったのう。。そうやって、すぐ人間ウォッチングを始めるのは、看護師時代のなごりなんじゃろかね。。。」

 

私「あ!もしかしたら、何かの宗教の教祖様で、もう一人の男性はお付きの人なのかもしれんのう。」

 

のぶ(呆れながらも、つきあう感じで)

「そうだとしたら、そんな怪しげな会、首を突っ込むなよ。」

 

私「それに、、のぶさんも気にならんじゃった? あの箱。。あの白装束の人が手に持っていた箱。これくらいの。あの中には、よほど大事なものが入っているに違いないっ。。」

 

のぶ「ああ、箱だったんか。本に見えた。後ろの本棚にあった箱だか本だかを、ちょっと手に取っただけじゃ?」

 

私「そんな感じじゃあなかった。あの持ち方はね、尋常じゃないのよ。愛を感じるわ。大切な人のお骨が入っているとか、、、絶対に捨てられない思い出の品が入っているんかも。」

 

のぶ(笑いながら)

「サスペンスの見過ぎだよ。そんなに気になるなら、本人に聞いてみる? 」

 

私(しばらくの間。真剣な声で)

「いや、機会を待つ。」

 

のぶ(急に真剣な声で)

「ではわたくしは、風呂場付近を捜査してまいりますっ!」

 

私「あ!もう、そうやってまたバカにして!」

 

(夫笑いながら部屋を出るドアの音)


Scene03へ続く 

 

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▼作者・古川祥子(さっちゃん)の日記ブログ▼

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