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Scene03 大丈夫大丈夫大丈夫へ続く
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Scene02 葉っぱ2枚の衝撃
青年「この子は、さゆりちゃんの、お友達ですか? 」
さゆり「お兄ちゃんは私にではなく、私が大事そうに抱えているうさぎのぬいぐるみ、ミキちゃんに向かってニッコリほほ笑んだのです。私が『ミキちゃん』とだけ伝えると」
青年「おはよう〜〜ミキちゃん。僕は、ひげのお兄ちゃんです!今日は、僕も、さゆりちゃんと一緒に、遊んでも、いいですか~?」
さゆり「そういって、私の方は一切見ずに、ミキちゃんに向かって挨拶をしたんです。ミキちゃんでもわかるように、ゆっくり、優しく、さも楽しげに、言葉を掛けてくれました。すると、ミキちゃんが、私の方を向いて、照れながら「お兄ちゃんならいいよ」と言って頷いてくれたのです。私にはそう聞こえたし、見えたのです。
お兄ちゃんは、私の心の動きを全て読んでいたんだと思います。私が、恥ずかしくてお兄ちゃんの目を見て話をしないこと、を嫌がる様子もなく、私がドキドキして無反応を決め込むと、ミキちゃんに助けを求めるように人形をそっと撫でながら会話するのです。」
青年「そっかー。ミキちゃんはそんなことも知ってるのか〜。すごいねえ〜!お兄ちゃんにもっと詳しく教えてくれる?」
ミキ「・・・・・・・・」
青年「へ〜〜〜〜〜!ミキちゃんって物知りなんだ〜!いっぱい知ってるんだね。すごいね!」
さゆり(4歳)「さゆちゃんも知ってる!!」
青年「へーー!さゆちゃんも知ってるんだ!ミキちゃんもすごいけど、さゆちゃんもすごい!」
さゆり「ミキちゃんと勝手に話をし始めて、それをみている私が、悔しがって無理矢理共感すると、そうやって私を褒めてくれるのです。いつの間にか私は、お兄ちゃんと会話できるようになっていました。やがて、自然に、流れるように会話できる自分自身が嬉しくて、どんどん喋っているのです。お兄ちゃんの人を嬉しがらせる相槌に、いつしか私はノリノリになっていました。
父が、そんな私の姿を見て、目をまん丸にして驚いていました。さゆりが生まれで始めであんなに喋った、、と母にも報告したほどです。
お兄ちゃんは、父に「少し散歩してきます。」と断って、近所の道を、一緒にゆっくり散歩してくれました。
青年「あ!すごい。」
さゆり「お兄ちゃんは突然大きな声を出しました。そして、」
青年「さゆちゃんに、新しい世界を見せてあげるね!」
さゆり「そう言って、抱き上げてくれた時の記憶が鮮明で、忘れられません。子供は、抱っこされることが大好きです。大人の目の高さになることで、世界が広がって見えるからです。そして、夢を持てるのです。見える世界が違うことで、希望が持てるのです。あのあと、もう少し大人になってそれに気づいた時、私は、子供たちの夢を実現させる手伝いがしたいと思い、保育士になると決めたのです。」
青年「ほらっ、これ見て~!この二枚の葉っぱ。何に見える?」
さゆり(4歳)「葉っぱ?」
青年「そう。葉っぱ。二枚だけ残ってるよね?」
さゆり(4歳)「ん???
(気が付く)あ、あ、あ!!!ミキちゃん!!!」
さゆり「お兄ちゃんが抱き上げて見せてくれたのは、生垣の上の刈り損ねた二つの若葉でした。私は感動で、大きな声で叫んでいました。そうなんです。残っていた二枚の葉っぱが、ウサギの耳のように生えていて、それを見たお兄ちゃんが、私に見せて、その葉っぱがミキちゃんのお耳と気付くまで、抱っこしたまま待ってくれたのです。
そこでさらに私の心は、お兄ちゃんにぎゅっと掴まれてしまいました。
こうやって大人が、二枚の葉っぱを見て、ウサギの耳みたいだ。と、子供の心をくすぐる発見をします、ですがその答えを子供に教えるのではなく、そこに的確な発問をして、子供自身が共感し、発見させて、感動させる技術を、その人は持っていました。
今だからわかります。きっと、教育大学の学生さんだったのか、そうでなくても、幼児教育を学んだことのある人に違いありません。
それから公園でゆっくり遊び、お昼ご飯は家に戻り、父と3人で中華丼を食べ、父は油まみれになりながら、使い物にならなくなったエンジンの部品を手作りで引き続き製作する間、お兄ちゃんとは川沿いの道で手を繋いで散歩し、川で泳ぐ魚を数えたり、葉っぱで船を作って流したり、落ちている木の枝と葵のツルで変な帽子を作ったり、突然手品を披露して私をびっくりさせたり。4歳の私を飽きさせることなくずっと一緒に遊んでくれたんです。
私にとっては、最高の一日になりました。しかし、夕方になり、家に帰ると、エンジン音が聞こえます。私は現実に引き戻されました。お兄ちゃんとさよならしなくちゃいけない!」
▼作者・古川祥子(さっちゃん)の日記ブログ▼