また会えたときに

これは、我がオットの遺した手記による、実話に基づいた物語です。

【第四話】私の奇跡 Scene03 娘からのメッセージ

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また会えたときに【1話から順番に再生されます】


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Scene03 娘からのメッセージ

 

私「その日、夕暮れの帰り道、主人の待つ家に、やはり帰ろうと決めました。

彼という大切な人を、いっときの感情で一人ぼっちにしようとした私。そんな私を許してくれるだろうか。

私が思い込んでいた『娘が寂しいだろうから私が死ななくてはならない』という気持ちは間違いだったと、人形劇を見て気づかされました。

残された私自身と、主人の苦しみと寂しさをしっかり見つめなくてはならない。それが先だ。

思い込んで間違うのは人間らしさ。悪かったと思えた時は、ちゃんと謝ればいい。帰って謝ろう。そう決めたら行動は早かった。

父に駅まで送ってもらう時、父がぽつりと、でも力強く、私に言ってくれました。」

 

(SE駅のホームの雑踏音)

 

父「お前が生きていてくれるなら、俺はそれだけでいい。死ぬんじゃないぞ。さちこ」

M私「そう言われたことで、父の心をも傷つけていたことがわかり、心から申し訳なくなり、大粒の涙が出ました。娘に先立たれた私と、同じ苦しみを味わせるところでした。お父さん、ごめんなさい。私、死なんから。もう大丈夫。そう言って別れました。」

 (SE 電車の到着音)

M私「岡山に着くと、主人が駅まで迎えにきてくれていました。まず最初に頭を下げた私。そんな私よりも姿勢を低く下にしゃがみ込み、頭を下げている私のまま、主人は抱きしめてくれました。涙が溢れて止まらず、改札口で声をあげて謝りながら泣いてしまいました。私だけが辛いんじゃなかった。この人の苦しみはいかばかりだっただろうか。」

 

私「(泣きながら)あなた、のぶさん、ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。(号泣)FO」

 

(SE玄関の鍵をあけて、ドアを開ける音)

のぶ「コーヒーでも、飲むかい?」

私「うん。飲む。(泣き疲れた感じ)」

(SEコーヒーを入れる音)(SE固定電話の着信音)

私「はい、古川です。」

M私「娘の残像が残る自宅の中で、辛い思いを少しづつ落ち着かせてきたとき、かかってきた電話は、娘の担任だった先生からでした。

娘が作った作品をお戻ししたい、というものでした。

私は、郵送をお願いしました。しかし先生は手渡ししたいと譲らず。

主人が電話を代わり、丁重に断るのかと思ったら、僕が貰ってくるから大丈夫。とわざわざ学校まで取りに行ってくれたのです。

私はそのままコーヒーを飲みながら、娘がいつも座っていた椅子を見ていました。よく見ると、椅子の背に髪の毛がついています。立ち上がって引っかかっている髪の毛をそっと取りました。自慢の長い黒髪が、こんなところにあったなんて。微かに香る娘の柔らかい香りに、涙がまた溢れました。

娘の名を呼びながら、居なくなってしまった寂しさに、心がまた悪い思い込みで充満しそうになってきました。

 

M私「だめよ。だめ。この現実を受け入れなくちゃ。あの子は、もうこの世にはいないの。もちろん忘れることはできない。でも、考えすぎちゃいけないんだからね。」

 

(SE玄関のドアが開き、閉まる音)

 

のぶ「ただいま。戻ったよ。祥子。誕生日、おめでとう。」

 

私(怪訝そうに)「え?誕生日はまだ明後日だけど。。」

 

のぶ「これ。」

 

(SE紙袋を渡す音)

 

Mみぃちゃん「楽しみにしててって言ったでしょ!お母さん。お誕生日、おめでとう。」

 

私「主人から渡された紙袋には、先生からのお手紙と、フェルトと毛糸でできたマスコット人形が入っていました。私の好きな緑色のワンピースに、おかっぱ頭と黄色い靴下。これは私だ。震える手でその人形を抱きしめました。」

 

のぶ「裏側を見てご覧」

 

私「人形の裏側を見た時、私の心が絶叫しました。カタカナの刺繍で、ダイスキダヨと書いてあったのです。」

 

のぶ「(涙を堪える声で)祥子。。君の誕生日に渡すつもりで、先生に教わりながら作ってあったそうだよ。その手紙も読んであげなさい。」

 

(SE手紙を開く音)

 

Mみぃちゃん「お母さん。お誕生日、おめでとう!これは、お母さんです。私の大好きなお母さん。いつも、夜遅くまで起きてお父さんのお仕事のお手伝いをして、朝早く起きて朝ごはんを作ってくれるお母さん。お仕事が大変なはずなのに、私が学校から帰ってくるといつも元気な声で「おかえりっ」て言ってくれるお母さん。私が怪我をすると、猛スピードでしょちしてくれて、ギュッと抱きしめてくれて、早く治りますようにってお祈りしてくれるお母さん。お母さんが、私のお母さんでいてくれて、私は世界一幸せ。ありがとうお母さん。生まれてきてくれて、ありがとう。私を産んでくれてありがとう。私を育ててくれてありがとう。ずっとずうっと大好きだよ!お母さん」

 

私「みぃちゃん、みぃちゃん!私も、、、あなたが、、、大好き。大好きだよ。大好き。ずっとずっと大好きだから。逢いたい!逢いたいよう。逢いたい。逢いたい。逢いたいーーー」

 

私「私は誓ったのです。その日から。ちゃんと、前を向いて生きよう。」

 

 

(SE暖炉の火が燃える音が大きくなる)

 【第五話】冴木さんの奇跡 Scene01 羅針盤 へ続く 

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私、生きます。

 

▼作者・古川祥子(さっちゃん)の日記ブログ▼