また会えたときにのドラマにはない物語があります。
娘の手紙は二枚あって、一枚は私宛。
もう一枚は、のぶさん宛。
まずはお読みください。
お父さんへ
お父さん、お母さんのことを大好きでいてくれてありがとう。お母さんも、お父さんのことが大好き。二人が、おたがいのことを大切にしてることがよーくわかるから、わたしも二人をだいじにしなきゃと思います。お父さんはわたしとは血がつながってないけど、ほんとうのむすめのようにしゃべってくれるね。それがとってもうれしくて、ドキドキします。わたしのいいところをたくさん見つけてくれるし、わたしがしっぱいしたことをぜったいにおこらず、なぜしっぱいしたかをせつめいしてくれるし、くやしくて泣いてる時は、ずっとあたまをなぜなぜ(撫で撫で)してくれるし、おもしろいこと言った時は大笑いしてくれる、ほんとうにありがとう。わたし、お父さんに会えてほんとうによかったよ!もし、お父さんとお母さんがつらいとき、くるしいときがあったら、今度はわたしがずっとそばにいて、二人をだきしめて、なぜなぜしてあげるからね。あんしんしてね。お父さん、わたしのかわいいお母さんを、守ってあげてね。やくそくだからね。
みぃより
この手紙を読んだ後、のぶさんは自分の部屋にこもって大泣きしてました。
もう二度と逢えない。二度と帰ってこない娘からの2枚の手紙には、私たち二人とも、感情も理性も崩壊しました。
気持ちが落ち着いたのは夜中でした。
二人で、娘が眠っている、海の見えるお墓に行こうということになり、歩いて行きました。手作りのプレゼントと、手紙のお礼を言うためです。
無言で歩き、お墓に着いたとき、みぃちゃんの匂いがした気がしました。彼女の香りは独特で、まるで金木犀の柔らかい香りがするのです。この時期には咲いてないのに、金木犀。
そしてお墓の前に立って、手を合わせ、のぶさんが耐えきれずしゃがみ込みお墓を手繰り寄せるようにして抱きついて泣きました。私はそんなのぶさんの背中と、お墓に手をつけて一緒に嗚咽。
そのとき、私たちは同時に声を潜めました。
頭に羽虫が飛んできたのです。それが首筋にまで届くような大きな羽。それを取り払おうとする反射が起き、二人同時に頭に手をやってわかりました。
虫はいなかったのです。
二人、顔を見合わせてまた涙。
最初は、娘の存在がなくなってしまったことによる喪失感で涙していましたが、娘の存在は消えていないこと、娘からの愛情を確かに感じられたことによる喜びの涙に変わっていきました。
本当は、羽虫だったのかもしれません。
しかし、私たちにとってはその体験は、娘の魂になぜなぜされた愛の形だったのです。
次の日から、のぶさんは変化しました。塾の募集を大きく始めたのです。今までは、大学受験のための塾でしたが、小中学生も受け入れ始めたのです。
事故で子どもの未来が奪われることが、今後ないようにと啓発も兼ねた塾を始めました。のぶさんらしい。
私は、病院で人形劇を始めました。野田さんの人形劇に感化されて、勝手にストーリーも人形のテイストも真似させてもらって、病院や公民館で、子どもたちに披露する活動を始めました。
最初はうまくいかなかったけど、仲間も増えていったので、楽しくやれました。
子どもたちの笑顔が、娘の笑顔。子どもたちの笑い声が、娘の笑い声。子どもたちの成長が、娘の成長。と、だんだん楽しめるようになっていったのです。
今、あの子がここにいてくれたら、、、と何度も泣きそうになりましたが、大丈夫。きっと見てくれている。お墓で私たちを撫でてくれたあの子は、今もそばにいて、私たちを見てるんだから。頑張らなきゃ!と奮起しながら生きてきました。
そして今、
もうすぐ会える。
娘に天国で、また会えたとき、その時は、私から声をかけようと思ってます。
「みぃちゃん。お母さん、あなたのこと1日も忘れたことなかったよ。会いたかったよずっと、会いたかった。」
娘は必ずこう言うはず。
「お母さん、よーう頑張ったねぇーー!お母さんの周りの人たち、素敵な人たちばかりでよかったねーー!みなさんにちゃんとお礼をしてからここに来た?」
こういう細かいところをチェックするのが娘の性格。そこも可愛い。
私が逝く時は、もちろん、みなさんにしっかり感謝を伝えてからと決めている。突然その日がやってきたとしても大丈夫なようにしてある。
感動の再会の日まで、あと何日かわからないけど、それまで、私は今の役割をまっとうするのみぞ。
やるぜよ。やっちゃるきにーーーーー!!!
(NHKオンデマンド「龍馬伝」最高!福山さんかっこいい)