また会えたときに

これは、我がオットの遺した手記による、実話に基づいた物語です。

【後書き】4  野田さんが旅に出た理由

野田さんに、旅に出た理由を尋ねたのは、のぶさんだった。

遺品の手帳はA4サイズあり、その中にびっしりと美しい文字でネタが詰まっている。そのネタのほとんどが野田さんのことばかり。なぜ、そんなに惚れ込んでいるかはまた後日。

今日は、また会えたときに、の旅のルートを簡単に紹介する。

当時大阪で大学生だった野田さんは、人形劇サークルの一員。そこで、一回生の時に新歓公演で作った人形があり、しかしその人形を使って劇をするのは新入生歓迎の一回きりのものだったのだそう。だから、棚に眠っている人形たちが可哀想だと思い、こっそり旅に連れていき、どこかで上演してあげようと思ったのだ。

とりあえず、現金1万円。近畿方面の地図を持って、キャンプ道具なし、セッタをつっかけて、短パン、Tシャツ、耳の部分がオレンジ色のジェットヘルメット、バイクはHONDAのダックス。とりあえず奈良方面に向かって走ったのだそう。

天理市に入ったところで盛大なお祭りに遭遇し、ふらふらと入ってみたらたくさんの子どもたち。早速人形を出して一公演したところ、お祭り騒ぎの大人も混じって盛り上がったと。

幼稚園の理事長さんが、1万円のお捻りを下さったことで、奈良を越えて、三重まで行こうと決心。

四日市に到着したところで、疲れで息が苦しくなり、休憩。初の野宿。その夜、

 

『なぜ僕は原チャリで旅に出たんだっけ。。。』

小さな公園に置かれた、夏祭り用のヤグラの骨組みの中で考えた。ここで寝ようと段ボールを敷いたが、なんだか心がざわつく。

旅に出る前に考えるべきところを、祭りのヤグラの中でふと考えるのが野田さんらしい。

記憶の中に、先輩の言葉が思い出された。

「長野の飯田に、人形劇カーニバルという人形劇の祭典がある。これはいつかみんなで参加しような!」


そうだ。それだ。それを聞いて行こう!と思ったのに、なんで奈良に来てるんだ?

いえ、奈良にきた理由は、その3年後に就職する会社が、野田さんを奈良に配属するのです。そして、担当が天理市。その幼稚園の先生に再会し、大きな注文をいただく、という意味があったのですが、この時はわかりません。

「ならと、ながの、似てるかあーーーー!!!」

と地団駄を踏む野田青年は、ざわつく胸を抑えつつ焦って夜中、長野へ出発。

こういう行き当たりばったりな旅をするから、エンジンが故障して、さゆりさんの家の前で故障して止まってしまうのだ。

長野飯田に到着して、どこで人形劇をするかを選定。本来ならば、エントリーして、ワッペンをもらって、場所をスタッフに案内されてから、上演せねばならない。

決められた場所で、するのが決まり事。お客様もマップを見て来られるわけで。このままでは、お客様は一人も来ない!

今すぐにでも人形劇がしたい野田さんは、まず気持ちのいい神社を選び、境内の下にある竹や板や縄をお借りして、さらに社務所で暗幕も借りてきて森の中に舞台を完成させた。

それから、黒子をかぶり、人形を持って、営業に出る。人形を操りながら、子どもたちを誘導して、神社の一角に座らせてしまった。

で、そこに友達を連れてきてもらうというやり口。。

一回目の公演を見て、面白そうだと判断した子どもたちは、伝令のように走って散り、お客様を集めてくる。青年は喜び、大いに楽しい人形劇をする。

そこで、私と出会ったというわけ。

「人形劇カーニバルで、ゲリラ人形劇をする!」

 

これが、野田さんが旅に出た理由だった。


これだけのはずだった。

終わらなかったのだ。

使えなくなった近畿の地図はカバンの底に入れ込んで、飯田から、星空がすごい阿智村を抜けて、豊橋まで南下。そこから東海道を直走り、途中、親戚の家を転々としながら九戸街道を北上し、青森の青函連絡船に乗り込む一歩手前でエンジントラブル。さゆりさん。

直って北海道に渡り、けんごさん。

北海道でのご縁はまたさらにすごくて、、そして函館から日本海側を南下する行程がとてつもなく面白く。これだけで3本くらいはラジオドラマが出来てしまう。

 

ま、これはまた違う機会にお話しするとして、野田さんという人は、実は、本当に普通の人。すこーし不思議ーな力を持っているかもしれないなって思うのは、ある。

 

あなたの雰囲気と、あなたの考え方で、それがわかるはずないでしょう?ってことを、真顔でスラスラと言ってしまったりして、でも言った後は照れて戯けて有耶無耶にしようとして、わけわからない挙動をする人。

 

会ってお話しすると、本当に柔らかくて、ちょっとおばかで、どうしようもなく真面目で。不器用で。

きっと、これを読んでまた悶え苦しんでると思うので、これくらいにしておくけど。

野田さん。のぶさんがあなたのことに惚れ込んで、人生をかけてあなたの追っかけをすると決めてから出るわ出るわ!

 

おっちょこちょいなのにあったかくて、怖がりなのに決めたら曲げないし、鈍感なくせに妙に神がかってる。

そんな野田さんに関わる出来事(もはや事件)が全国各地で盛りだくさん。

 

相当楽しませてもらってるの。これからも小出しにします。ネタをありがとう野田さん❤️

 

だからお礼に、大多数の人々にたっぷり楽しんでいただきますから!!!(それが望みじゃろ?)

覚悟しいや!!(志麻風)これ好き(*⁰▿⁰*)


【後書き】5 哀愁の登別(のぼりべつ) - また会えたときに