また会えたときに

これは、我がオットの遺した手記による、実話に基づいた物語です。

【第五話】冴木さんの奇跡 Scene03 龍雅さん

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また会えたときに【1話から順番に再生されます】


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Scene03 龍雅さん

 

(SE暖炉の火が燃える音)

 

N私「冴木さんは、静かに涙を流しながら、「羅針盤」を胸の前で、ぎゅっと両手で挟み、目を瞑った。その美しさに、ああ、この人は本気で何かを探してきて、今、その答えが見つかったんだなぁと確信した。

その場にいる全員が、つられて涙を流した。

談話室は静まり返り、まるで初めて水の中に潜った時のような、そんな驚きと、清冽さとを感じていた。」

 

(SEコトン。本をテーブルの上に置く音)

 

N私「冴木さんは、手にした本を、またテーブルの中央に戻した。今度は表紙を開いた状態で。」

 

冴木「龍雅さんはあのとき、サインのほかにメッセージも添えて書いてくれていました。皆さん。これをご覧いただけますか。」

 

N私「置かれた本のすぐ前の席にいた私には、覗き込まずとも、龍雅さんが書いたというそのメッセージが見えた。そして、声に出してそれを読み上げた。」

 

私「あなたは伝える人。2021年4月、答えが見つかります。それまでは、探し続けてください。2013年11月3日、、、龍雅。。。」

 

N私「私は驚いて、夫の顔を見た。めったに泣かない夫が、目に涙を潤ませていた。」

 

山下「え? 2021年4月って、、、ええっ!今日、まだ4月だよね?」

さゆり「はい。今日は4月30日です。」


(SE山下がソファを立ち上がり、駆け寄る音)


冴木「2021年、春の宵、答えは見つかりました。私自身が何者かがわかりました。実に大きな大きな学びを得られました。みなさんに教えていただいたのです。心からお礼を申し上げたい。ありがとうございます。」

さゆり「ちょっと待ってください! そ、その龍雅さんて方が、私の、、、あの、、お兄ちゃんてこと?ですか?つまり、、同一人物、ということですか?」

けんご「あぁぁ、なんか頭がパニックだ。ちょっと整理させてください!山下さん家族を、カモシカの大群から助けてくれたバイクの青年、さゆりさんの初恋の人、僕の両親が出会って僕を導いてくれたお兄ちゃん、祥子さんが飯田で救われた人形劇の青年、これは全て同一人物で間違いないでしょう。同じ30年前のことで、皆さんの記憶も確かだし、特徴もあっている。その人が、この本を書いた、龍雅さんて人ってことですか?」

 

(SEさゆりとけんごも、椅子から立ち上がり、駆け寄ってくる音)

山下「冴木さんが龍雅さんの講演を聞かれたのが8年前で、龍雅さんは42歳だった。そのときに、大学時代にバイクで旅したエピソードを話していた。ちょっと計算するわな。42➕8で、50歳。つまり、今は50歳。そしてそこから30年前、となると20歳の大学生。、、、、時系列としては符号する。」

 

N私「テーブル席の、冴木さんの隣に座り直していた山下さんが、冷静に検証し出した。普段なら、私が誰よりも真っ先にその検証役をかってでるところだが、今日の私は頭と心がそこに追いついていない状態で、半ば呆然となっていた。」

 

私「そっかあ、、、お名前が龍雅さん、って方だったのね。。。会いたいなぁ。。。っていうかその本をまず、読ませて欲しい。。。」

 

さゆり「私も読みたいです!龍雅さんは、、、今日こうやって、私たちが、つまり自分に携わった人間が、偶然にも同じ場所に4月30日に集まることになることを、わかっていたってこと?」

 

N私「そうだ。そんな不思議な偶然があるものなのだろうか。30年前の、あの夏の日に出会った青年。あの笑顔の青年が、こんな神がかった未来を作ったのだろうか。」

 

冴木「さあ、どうでしょう。それこそ、神のみぞ知る。ですね。」

 

N私「私の記憶の中の青年が、片手に人形を持って、いたずらっ子のように笑っている姿が目にうかんだ。」

 

(SE暖炉の火が燃える音が大きくなる)
 

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 【最終話】そして、奇跡は続く Scene01 野田さんの奇跡 へつづく

▼作者・古川祥子(さっちゃん)の日記ブログ▼